【過去問解説】第64回 実技2 問4

2025年11月11日

こんにちは!今回は気象予報士試験 第64回 実技2 問4を解説します!

◇模範解答

① 500hPaの2つのトラフの位置(緯度・経度):北緯35°東経120°付近および北緯33°東経126°付近(等高度線5760mとの交点を読む。許容範囲±1°程度)
② 前線活動が活発な領域の緯度経度とその理由:北緯30°東経135°付近。理由:850hPaで12℃と15℃の等温線間隔が狭いことから南北の温度傾度が大きく、南からの強い風による暖気移流が顕著で、加えて700hPa付近で強い上昇流が生じているため。
③ (②)で特定した領域と①のトラフとの位置関係:当該領域の西北西(北西)側に500hPaトラフが位置している。
④ 地上低気圧(日本の東にある低気圧)の移動方向と速さ(初期時刻から12時間後まで):東北東(または東)方向、約10ノット
⑤ 同低気圧の移動方向と速さ:北東(または東北東)方向、約25ノット
⑥ 500hPaのトラフと地上低気圧の位置関係の時間変化:トラフは低気圧中心の北から北東へと離れていく
(ア)北緯28°(許容27~29°)、東経132°(同131~133°)付近
  (イ)北緯31°(許容30~31°)、東経133°(同132~134°)付近
⑧ +8hPa

◇解説

500hPa高度場と地上予想図を組み合わせた包括的な問題です。まず①では500hPaのトラフ位置を問われました。図5(500hPa解析図)では5760mの等高度線などが描かれており、渦度の大きな谷状の部分(トラフ)を見つけます。一つは東シナ海付近から中国大陸東岸に伸びる長いトラフ、もう一つは日本の南東海上にある短波トラフでした。緯度経度で答える指定なので、該当トラフの軸が緯度5760m線と交わる点を読み取ります。具体的には、長い方のトラフは北緯35度・東経120度付近、短い方は北緯33度・東経126度付近がトラフ位置として答えられます。試験では±1°程度のズレは許されますので、模範解答例では(35°N,120°E)および(33°N,126°E)とし、カッコ内に許容範囲として(34°N or 121°E)なども示されています。

前線活動が活発な領域を問う問題です。数値予報の予想図(図9あたり)で前12時間降水量が多い領域が赤枠等で示され、その付近の大気の状態を詳細に読み取る必要がありました。鍵となるのは850hPa面の温度場と風、700hPa面の鉛直流です。前線が活発なところでは、(a)顕著な温度傾度(強い前線帯)、(b)強い暖気移流(南からの暖かい風)、(c)強い上昇流、の三拍子が揃うことが多いです。850hPa気温図を確認すると、東経135°付近に南北の等温線間隔が狭い部分が見られます。例えば12℃と15℃の等温線が密集しているエリアです。さらにその付近では南からの強風が吹いており暖気を北へ運んでいます(暖気移流)。加えて700hPaの鉛直流予想図では-84hPa/hなど激しい上昇流域が重なっています。以上より、北緯30°東経135°付近がこれらの条件を満たし前線活動が活発だと判断できます。解答では緯度経度とともに「850hPaで温度傾度が大きく強い南風による暖気移流があり、700hPaで強い上昇流もあるため」と理由を述べます。ここではすべての要因を盛り込むことが重要です。温度傾度だけ、など一部しか触れないと減点の可能性があります。

③はその領域(②で答えた場所)に対する上空トラフの位置関係です。一般に地上の発達する低気圧や前線の西側上空に500hPaトラフが位置するとき発達が強調されます。図5を見れば、前記北緯30°東経135°付近のやや西寄り、北西~西北西方向にトラフ軸があります。答えとしては「西北西(または北西)に位置する」となります。

④地上低気圧の移動速度・方向を問われました。これには数値予報資料の地上予想図(例えば図11・図12)が使われたでしょう。④は初期から12時間後、つまり6月10日21時から11日9時までの低気圧移動を読み取ります。低気圧中心は東北東方向に移動し、距離はおよそ150海里程度だったとあります。12時間で150海里なら速度は約12.5ノットとなります。10ノットから15ノットの範囲で許容とされ、方位も「東北東(場合によっては東)」と若干の幅を持たせています。

⑤36~48時間後、すなわち11日9時から12日21時のうち後半12時間(12日9時→12日21時)における移動です。36時間後(12日9時)の低気圧位置から48時間後(12日21時)の低気圧位置まで、図上で北東方向に約300海里動いていました。12時間で300海里なら25ノット程度です。方向は多少東寄りの北東(東北東)とも表現できるので、「北東(東北東)へ25ノット」が模範解答です。

⑥では500hPaトラフと地上低気圧の位置関係変化を述べます。数値予報の時間推移を見ると、36時間後(11日9時)まで低気圧は順調に発達し、その間500hPaのトラフ軸が地上低気圧の西側から少し北側にある位置関係でした。しかしそれ以降、トラフは低気圧から離れるように北東方向へ進んでいき、48時間後(12日21時)には地上低気圧の北~北東側遠方にトラフが退いてしまっています。上層のトラフが地上低気圧の真西よりも先に進んでしまうと、低気圧は深まれず衰弱に向かいます(温帯低気圧の発達条件として上空トラフの後面に地上低気圧が位置することが重要です)。

(ア)12日21時に存在する低気圧が、36時間前(11日9時)にはどこにあったかを推定するのが(ア)です。⑤で求めた低気圧の移動(北東25kt)を36時間逆行させれば、大まかな位置が出せます。12日21時の位置から南西方向へ36時間分戻す計算です。12時間で300海里動くので36時間で900海里南西へ離れた位置にいたと単純計算できます。北緯28°東経132°付近と推定されます。

(イ)数値予報図には風や気圧の場が描かれているので、(ア)で得た仮の位置を手がかりに、「低気圧中心は風向が南から強く吹き込む場の風向変化点や、700hPaの強い上昇流域、地上の気圧の谷線に一致するところ」に合わせて修正します。その結果、(ア)の位置より北寄りに3°ほど移動させると丁度良いとなり、北緯31°東経133°付近となる。このように、(ア)は力学場無視の単純補外、(イ)で実際の場を考慮した修正、という二段階の推定をさせる高度な設問でした。

⑧⑦で推定した11日9時の位置での地上天気図上の気圧が1008hPaであったことが資料から読み取れます。一方、12日9時に北緯29°東経130°付近にあった同じ低気圧の中心気圧は1016hPaでした。(※12日9時は48時間後の予想図に該当。)つまり36時間で8hPaも気圧が上がっています。これは低気圧としては衰弱(充填)したことを意味します。閉塞が進み、低気圧中心が高気圧化する方向に向かったのです。よって答えは+8hPaとなります。


◇模範解答


② 上記トラフA・Bと地上低気圧の発達との関係:12日21時までは主にトラフAの前面に位置しており、低気圧の発達に寄与し、トラフBはその後の発達に寄与する

◇解説

①12日9時の500hPa高度場では、該当低気圧に対応して2本のトラフAおよびBが解析されます。等高度線の強い屈曲と渦度極大域に沿って赤線で滑らかに描画されたもので、片方は低気圧の西側上空から南西方向へ伸びるトラフA、もう一つは低気圧の北東側上空に位置する短波トラフBとして示されています

②ではそのトラフA,Bと地上低気圧の発達との時間的役割を答えさせる問題でした。トラフAは元々11日頃から低気圧を発達させてきた主役で、12日21時まで低気圧前面で作用しました。しかし12日21時以降はトラフAが追い越し、代わりに後続のトラフBが低気圧の西側に来てさらなる発達を引き継ぐ形になります。要するに、「トラフAは主に12日21時までの発達を担い、トラフBはそれ以降の発達に寄与する」という形です。この問題は時間による役割分担を正確に述べる必要があり、例えば「トラフAが低気圧の前半の発達を、トラフBが後半の発達をそれぞれ促した」という答え方も可能でしょう。


◇模範解答

◇解説

前線解析(閉塞の判定と前線の描画)

まず、日本の東にある低気圧が閉塞過程に入っているかどうかを判断します。(図12下と図13下を重ねた画像↑)12日9時の時点で、地上天気図上の低気圧中心の南側に500hPaや850hPaの強風軸(ジェット流)が巻き込むように伸びていること、および低気圧の南側に寒気が回り込んでいる様子から、この低気圧は既に閉塞が生じていると考えられます。強風軸と地上低気圧の位置がほぼ縦に重なってきた場合、温帯低気圧の成熟段階(閉塞過程)に入ったと判断します。閉塞していれば、強風軸と各前線の交点が閉塞点になります。

次に温暖前線と寒冷前線の具体的な解析です。850hPaの気温場を見ると、東経135°付近を中心に等温線の集中帯(温度傾度が大きい部分)が顕著で、これが地上の温暖前線に対応します。そのため温暖前線は低気圧から北東方向へ、850hPaの12℃~15℃等温線が密集する帯に沿って引きます。一方、寒冷前線側は850hPaではっきりしないことも多いので、700hPa付近の湿数(乾湿境界)や鉛直流(上昇/下降流)分布、さらに地上付近の風向シアなどを参考にします。今回は700hPaで湿数の大きく異なる部分(乾いた空気の前縁)や、強い上昇流域の境界が低気圧南側から伸びており、加えて地上でも南風から西寄り風への風向変化ラインが見られることから、そうした情報を突き合わせて寒冷前線を解析します。寒冷前線は低気圧中心の南側から南西方向へ伸びるように描くのが適切です(風向シアの線が目安)。

そして閉塞前線の型の判定ですが、850hPaや地上付近で閉塞前線の前面と後面の気温を比較します。今回、閉塞点より北側(前面)の気温がおよそ9℃、南側(後面)の気温がおよそ15℃と推定され、後面の方が明らかに高温でした。つまり暖かい空気が寒冷前線側(後側)に残っているパターンであり、温暖型閉塞前線(後面が暖かい閉塞)が成立しています。温暖型閉塞では、もとの温暖前線の進行が遅く寒冷前線が追いついて上に滑り込む形になります。今回もまさにその状況です。したがって閉塞点からは温暖前線記号と寒冷前線記号が同じ側に描かれる温暖型の閉塞前線を記入します。最後に、それら前線を地上天気図上の気圧の谷線(等圧線のくびれ)に沿うように滑らかに結び完成させます。以上が前線解析の概要で、解答としては「低気圧は閉塞しており、温暖型閉塞前線となっている。温暖前線は東経135°付近で温度傾度の大きい帯に沿って引き、寒冷前線は低気圧南側の乾湿境界と上昇流の強い部分および風向シアを目安に引く」といった記述になります。温暖型閉塞であることを明記する点が採点重要箇所です。


以上です!独自解説とAIを組み合わせ解答・解説を作成しています。訂正・ご意見あればコメントやご連絡いただけると幸いです。皆で最高の独学環境を作り上げていきましょう!

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